Japan ColorとX-Riteの密接な関係(追記あり)

   2020/04/24

今回で6回目となった Japan Color認証制度「標準印刷認証」更新審査の手続きを無事に完了しホッとしたのも束の間、2020年1月10日にJapan Color認証制度事務局より一斉配信された情報で大変驚かされました。

新規申請時における測色器の注意事項
更新審査時におけるメーカー較正、修理サービス終了後の測色器での申請について

内容としては、「X-Rite社のi1Pro、518、528、530、SpectroEye、939、DensiEye700のメーカー較正、修理サービス終了に伴い、新規も更新も審査の申請は受け付けません」ということです。

正直寝耳に水でしたので、2009年初回審査で使用した「オペレーションガイド Ver1.0」を調べたところ、そのような注意書きは見当たりませんでした。しかし2013年12月に改定されたVer2.1 3-1 ① 2)では「ただし、メーカー較正、修理サービスが終了しているものは対象外となります」という感じでしれっと追記されていたのです。これは重要なポリシー変更です。

弊社ではX-Rite社の製品は多用しており、i1Publish Pro 2i1 iSis2、DTP70、528、530など、CMSにおける日常業務には欠かせない設備となっています。

i1isis2測色中 DPS_測色器_20200121
次回審査は2年後だからそれまで安心ということではなく、次の更新に備えて継続・維持するには3か月ごとの定期管理が必要になります。申請組織は指定されたチャートを使用して3か月に1 回以上に相当する頻度で印刷を行う必要があり、また、管理項目表及び管理記録一覧表への記入、ステップチャートの綴じ込みが義務付けられています。そして7 回分以上の管理項目表(ステップチャート添付)を保管し、更新申請時にまとめて事務局に送付する必要があります。

つまりX-Rite 528で申請登録している弊社は、直ぐにでも新しい測色器を準備する必要があります。

X-Rite eXact(エックスライト・イグザクト)
審査で必要なハンディータイプの分光濃度測色計はこのX-Rite eXact(エックスライト・イグザクト)に買い替える必要があります。スタンダードモデルでも80万円程度と高価なものとなります。現在弊社使用しているX-Rite 528や530は専用の色管理ツールアプリケーションと接続している為、分光測色計を買い替えるだけでなく、CMSツールも別途新たに購入し構築する必要もあります。

なぜJapan Color認証制度事務局は測色器のメーカー保証に対し拘り始めたのでしょうか。確かに初回審査ではJPMAより送付されたパッチを自社の測色器で測定し、JPMAで審査に使用される測色器との器差を確認します。器差確認の結果がΔE≦1.5 となるまで事前審査に進むことはできませんから、実質的には事前の予備審査つまり測色器の適合性審査を実施しているのです。しかしその後2年ごとに実施される更新審査では、測色器の器差確認を行っておらず、本質的な要求事項である測色器の適合性よりもメーカー保証に固執した審査基準になっているのが現状です。

X-Riteの分光測色計を新規購入もしくはメーカー較正するとCertificate of Calibration(英文の較正証明書)が添付されてきますが、メーカー推奨有効期限がたったの12か月しかありません。私も何度かメーカーに較正を依頼したことがありますが、数か月間待たせれ費用は数十万円程度かかりました。Japan Color認証制度事務局も毎年メーカー較正を実施することを推奨しており、果たしてどれだけの測色器ユーザーが実行しているのかは疑問です。もし審査においてJapan Color認証制度事務局がメーカー保証に拘るのであれば、更新時にこの較正証明書(二年分だと二枚)の提示が必要だと思います。しかし実際は初回審査において器差確認によって、より合理的で本質的な測色器の適合性審査しているので、メーカー保証への固執は大変矛盾しているのです。

 

巷では2020年1月14日にWindows 7のサポートが終了し話題となりました。

Windows7サポート終了
マイクロソフトの公式サイトには「これを機にパソコンを買いかえましょう!!」と宣伝しているのが露骨で気持ち悪いです。確かにOSのライセンス料を徴収できる絶好の機会ですから仕方がないと思いますが。

Windows10搭載のパソコンをお調べください
X-Riteの公式サイトにも、Japan Colorと連携したページはいくつも存在します。
Japan Color測色技術ガイド
Japan Color デジタル印刷認証のチャート測定ガイド

Japan Color 2011 ICCプロファイルはX-Rite, INCORPORATEDが作成しJPMAが提供しており、X-RiteとJapan Colorは密接な関係であることがわかります。

いずれにしても本来中立的立場である一般社団法人が、メーカーと共に買い替えを促進していると誤解されかねない今回の件は、審査方法を変更(更新審査時に測色器の器差確認を追加)するか猶予期間を設けるなど、見直しや再考していただくことを強く望みます。


2020/04/24 追記
このブログに関して印刷学会出版部さんから発行されています月刊『印刷雑誌』2020年5月号の記事にも執筆させていただきました。

jp2020_5

記事タイトル「オフセット印刷における色管理の今」

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket