本機校正に対する誤解

 

弊社において最もご要望の多い品目は、やはり本機校正です。
その本機校正に対して少し誤解もあるため、色校正の中でも、今回は本機校正にスポットを当て、改めて考えてみたいと思います。

菊全5色機LA-537

この“本機校正”という漠然とした呼び方は印刷用語として定着したものの、その解釈は様々です。日本印刷産業連合会の用語集でも「実際の印刷機で印刷した校正刷り」と定義しており、DDCPなどの簡易校正や平台校正とははっきりと区別しているのが確認できます。近年DDCPは環境やコスト面でかなり淘汰されており、本紙と専用紙タイプは選べるものの、インクジェットの疑似網点が主流です。印刷現場では複数の印刷機が設置されていることが多く、本刷り直前までどの印刷機で刷るか決まらず、たとえ計画的に決めていても直前で変更することが多いと思います。実際の印刷機と同じ機械で色校正をすることを、あえて“実機校正”と用語を区別して用いるケースもあります。

弊社においても“本機校正”は従来の平台校正と区別する意味で使用し、正確に言うならば「菊全5色オフセット枚葉印刷機を用いた極小ロット(基本7枚通し)印刷」と呼ぶのがより正確かもしれません。本来本機校正をしたものは責任を持って本刷りまで行うのが理想ですが、弊社の印刷現場は限られたスペースで作業をしている為、ロットが多いものはとにかく苦手です。そうなると本刷りは別の印刷機になる場合が多くなりますが、できる限り色校正の段階で本刷りと同じものが刷れるよう、日々努力しています。お仕事ごとに用紙だけでなくCTPで露光するSPM(出力解像度、網点形状や線数・角度)を本番と同じにし、本刷り時を想定した濃度やドットゲイン、トラッピングなどに近似するようコントロールしています。最近では「UVで印刷した基準チャートを見本にマッチングしてほしい」、というご要望も増えています。

オフセット枚葉印刷機と平台校正機はその構造上の違いから、どんなに追い込んでも見当やトラッピングの差は埋めることができません。
しかし弊社では今まで平台校正では追い込めなかったそれらの課題を、本機校正にてしっかりと色管理を実施することで解決できるようになりました。

測色と色差管理

インキに関しても弊社ではかなり拘っていまして、インキメーカーのDICさんにお願いし、とにかく繰り返し精度を追求した高精度な特練インキを使用しています。
インキツボの掃除も日勤・夜勤交替時毎回実施しており、最低でも1日2回新しいインキに入れ替えています。

インキツボ

H-UVやLED-UVの普及もあり、作業現場の温湿度を一定に保つことやローラー温調は最近では必須条件になりつつありますが、それでも気まぐれな用紙の状態やブランケット・ローラーの減り具合、インキの乳化状態など変動要素は様々です。弊社においても、本機校正で印刷したものを同じ印刷機で本刷りする場合は、色を合わせるために通し数に応じてドットゲインやローラー温調などを適切にコントロールしています。

サンプリング

つまり本刷りで実際に使用する印刷機で贅沢にコストをかけ、その他全て本刷りと同一条件で色校正刷り(本機色校正)を行ったとしても、やはり色を合わせるのは至難の業ということですね。

本機校正刷りが正しいのではなく本刷りがターゲット(基準)でありただ単に「本機校正はDDCPや平台校正より色が合わせやすい」というのは誤解ですし、「ターゲットの品質に最も近づける可能性が高いのが本機校正」ということになりますから、例え本機校正であっても追い込む必要があり、追い込んで構築した後も継続的な繰り返し精度が要求されます。

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